十九女池伝説
むかし、関ヶ原の村南の大池に、大蛇が住んでいたと。夜になると、年のころ十九ぐらいの女となって、横笛を吹いて歩いたり,若者のいる家へお椀をかりにきたりした。若者たちは、そのあまりに美しい姿と、きれいな笛の音色にさそわれるように、それぞれ胸をときめかせていた。だがどうしたことか、彼女の住まいは誰もしらなかった。 ある若者は、はるか大池の波の音を聞きながら、はたと手をうった。そしてつぎに彼女がお椀をかりにきた時、その底に縫針をさしておいた。大蛇は、金物が大きらいなので、ためしたのである。案の定、その翌日からは、ぱたりと女のすがたがみえなくなった。それからしばらくして、<縁あって、とおくへまいります。十九女>と書いた短冊と横笛が、若者の家の入り口においてあったと。今、お椀は法忍寺、横笛は八幡神社の宝物である。